ama-oto
「ちょうだい。」

 意味が分からず、どぎまぎしてしまった。清人の視線がお茶と私を行き来した。いつもの、ほんの少し甘えた目で、清人が私を見た。意味が分からない。首をかしげて清人を見た。

 「じゃ、俺があげる。」

 そう言うと、お茶を一口ふくんで、私に近付くとそっとキスをしながら、お茶を口うつしされた。心臓が早鐘を打って、顔が赤くなるのが分かった。恥ずかしくて、清人の顔が見れなくて、うつむいたままになってしまった。言葉がうまく出ない。

 「ね、菜月、ちょうだい。」

 うなづいて、私もお茶を口にふくんで、清人にキスをして、含んだお茶を清人の口に流し込んだ。清人の腕がそっと私の肩にまわり、動きを封じた。

 「菜月、ちょうだい。」

 清人が耳元で熱を帯びた声でささやいた。石鹸のにおいと、ふわふわの髪の毛の感触が、小難しく考えて疑ってきた気持ちに蓋をした。清人の柔らかい唇が、耳たぶや首筋にそっと触れた。

 「清人、好き。」

 清人の熱に浮かされながら、そっとつぶやいた。

 「俺も。」
 「ちゃんと言って。」
 「菜月、好きだよ。」

 そうつぶやいて、唇をふさがれた。

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