ama-oto
 1限が終わり、教室を移動したところで福間くんに会った。研究室に寄ってきた彼から、午後の休講情報がもたらされた。

 「やった、午後休みだ~。」

 不意にもたらされた空き時間が妙にうれしかった。いろいろ疑ったりしたことからの解放感から来るものだろうか、不思議と心が軽くなった。両手を上にぐっと伸ばして、のびをして深く息を吐いた。

 「豊崎さん、昨日いいことでもあった?」

 少し間があった後に発せられた福間くんの言葉にドキッとして、腕を伸ばしたまま固まった。そのままの姿勢で福間くんを見ると、ノートと文献に視線を落としていた。何も言えずにそのまま福間くんを見ていたら、軽く笑ってこういった。

 「ピンクオーラが出てる。」
 「え?な、なにもないよ、普通普通。」

 照れ隠しにあははと笑ってみたが、福間くんは首を少し傾けて、ぼんやり私を見ていた。

 「妬ける。」
 「え?」

 ちょうど教授が入ってきたところで、会話は打ち切られた。最後の言葉、目が笑っていない福間くんが投げた言葉が、また小さなとげになって刺さった。チリチリと痛い。肩を叩かれて、振りかえると福間くんがノートの切れっぱしを手に握らせた。

 「集中」

 開いた切れっぱしに、お前のせいだバカ、と、心の中で悪態をついた。
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