ama-oto
14
 できるだけ穏やかな気持ちで過ごしたい。身体の健康も心の健康あってこその部分もある。そのことは十分すぎるぐらい理解している。けれども、気がつくと、毎日の中にはストレスの火種がくすぶり、要らぬ考え事をしてしまい、自爆してしまう。だから、ほどほどに見て、ほどほどに見ていないフリをしていた。ほどほどに聞いて、ほどほどに聞いていないフリをした。ほどほどに本気で怒り、ほどほどにやり過ごし、折り合いをつけることを覚えた。

 そうやってうまくやってきた。すべてにおいて、とは言わないけれども。

 窓から見える外の景色は、ここ数日お目にかかれなかった、ピカピカに晴れた空が広がっていた。晴れた空とは裏腹に、話の内容は気分を重たくさせるものだった。なんでこんな話になったのか、会話の前後が全く思い出せない。けれども、学食の窓際の席で、いつの間にかそんな話になっていたようだ。

 フリは所詮ポーズでしかなく、聞いていないフリをしていたことや見ないフリをしていたことについて、うまく問いただせない。そのことが心の中にトゲとなって残っている。そのトゲが心でささくれをたくさん作っている。あぁ、そうだ、どこかで無理をしているって、分かっている。分かっているさ……もう考えたくない。できれば、話を切り上げて、家に帰りたい。いや、一体今、何時だろう。携帯の画面を付けると、16時と表示された。
< 78 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop