*嘘月とオオカミ先輩*
「うわ……何つけてんだよ」
女の子の首についたキスマークを見てもスルーしないところがこの男らしい。
「違うよ。虫に刺されてちょっと掻いちゃって」
念のため反論するけど、エリの「先輩という虫にね」という言葉で台無しになった。
コウキの爽やかな青空みたいだった表情が、たちまち雲が重く垂れ込めた雨空に変わる。
「……まだ先輩と続いてんの?」
はぁーと大きく息を吐き出し、つまらなそうに呟いた。