【完】俺が消えてしまう前に


「樹君は幽霊。だから好きになっちゃいけない!!って考えてた。・・・樹君が成仏できない理由はもしかしたら、私が樹君を好きだからなんじゃないかって思ってたの。そんなのは駄目。だから早く樹君への想い断ち切らなきゃ・・・ってずっと」


七海の言葉一つ一つを聞くたびに、
俺は抱きしめる腕を強める。

苦しいんじゃないかってほどに、強く。



「断ち切りたいのに、断ち切れなくて。だから実行委員に選ばれた時思ったの。樹君から離れるいいチャンスかもしれないって。本当は樹君がいてくれた方が心強いのに、わざと帰っていいよって雰囲気もだして・・・」


「そうだったのか。・・・俺はそれがきっかけで本当に除霊してもらおうと思ったよ。少しだけ決心がついたって言うか」


「そんなはずじゃなかったの!!」


「分かってる」


「樹君から離れたら成仏できるはず、そう思ってたけど除霊とか・・・そんな。樹君が苦しい思いで成仏しちゃうのは嫌だよ?」


「俺も、結局さ七海の事最後の最後まで思い浮かべて・・・。聖子さんが除霊できないって言った時、ほんの少しだけほっとしたところもあった」





抱きしめ合う力を弱め、俺らは少し離れて改めて気持ちを確認し合った。



「樹君、私ね」


「言うな」


「え?」


「七海が好きだ」


「・・・」


七海はそっと俺の唇にキスをした。


優しい優しいキスを。







・・・今なら除霊でもなんでもしてくれ。


きっと笑顔で痛みに耐えるだろう。



それくらい、幸せだ。


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