魅惑のハニーリップ
「遥ちゃん……」

　佐那子さんはポツリと私の名前を呟いて、すぐにまた宇田さんへと視線を移す。
　そして、みるみるうちに満面の笑みになった。

「俺、ちょっと部長に報告に行って来るから」

　振り返って私にそう言った宇田さんの顔が、少し照れてるみたいに見えた。
　コクンと頷いて返事をしたら、宇田さんはやさしい笑みを向けてくれた。
　宇田さんが営業部に入っていくのと同時に、佐那子さんが私のほうへ近づいてくる。

「遥ちゃん、ごめんね。私……お節介なことをしちゃったよね」

　バツが悪そうに謝る佐那子さんは、いつもの彼女とは違う感じがする。
　いつも美人で綺麗キャラなのに、今の佐那子さんは可愛らしい感じで、思わず笑いそうになってしまった。

「聖二に、和久井くんとのデートのこと教えちゃったのは私なの。余計なお世話だったなら謝るわ」

「いえ。そんなことないですよ。逆にお礼言わなきゃ。ありがとうございます。佐那子さんがきっかけをくれましたから」

「ってことは……聖二と？」

「……はい」

「そっか。聖二のヤツ、うまくやったのね」

　はにかんだ私を見て、佐那子さんはまた花が咲いたように綺麗な笑みを浮かべる。

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