ピンク☆ゴールド【短編】
☆4☆ ピンク☆ゴールド
屋上には、緩やかな風が吹いていて、穏やかな春の陽射しが、殺風景な景色を、明るく照らしていた。

あまりにも屋上は広々している上に、よく解らない機械のような物が、幾つも設置されているため、辺りがよく見渡せない。

私はキョロキョロと、錐生の姿を探した。

――絶対ここにいる。

私の勘が、そう示したんだ。



いきなり、ざぁ…と強い風が吹く。髪や制服は乱れ、何とも惨めな姿になってしまった。


嗚呼…もうっ、最悪…。


仕方がないから、櫛で髪をとかそうと、ポケットの中を探る。

すると、指先に冷たい物が触れた。

何だろうと思い、それをポケットから取り出す。


「あっ……。」


その正体は、結衣から貰ったルージュだった。

そういえば、貰ってからまだ付けてないや…。

そう思った私は、ルージュのキャップを取り、自分の唇にそっと塗った。

ポケットから、鏡を取り出し、自分の口元を見る。

潤いのあるぷっくりした唇。愛らしくも、何処か妖しげでとても綺麗…といった感じだ。

きゅっと口を結んで、鏡をまたポケットへと戻した。


先程から、辺りは全く変わらない。むしろ、静まり返った。

…そりゃそうだ。なんせ今は、授業中だし。

私、またサボっちゃった。何やってんだろう。

でも、ここまできたら、引き下がれない。何としても、私は言うんだ……。



周辺は全部探したし…。

本当、居ないのかな?

どうしよう…今までの決心、水の泡だよ。そんなの嫌っ!




カシャン……




突然、背後から音がした。びっくりして、振り返る。


「あ…れ、お嬢……?こんな所で…何してんの…?」


そこには…探していた、錐生の姿があった。



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