狼系王子とナイショの社内恋愛

「あ、つきましたよ、エレベーター」

痛い視線に負けそうになっていた時、金子さんの救いの声が聞こえた。

「あ、私は階段だからここで……」
「奥どうぞー」
「だから……っ、金子さん？！」

階段で行くって言ってるのに、ぐいぐいとエレベーターに押し込んでくる金子さんに、顔をしかめたけれど。
金子さんはそんな私なんて気にするでもなく、にっこりと微笑んでいた。

……エレベーターの外で。

「せっかくですし、ふたりで話してみてもいいんじゃないですか？
ね、先輩」

ああそういえば金子さん、さっきからやたらと私と結城さんをどうにかしたがってた気がする……。
そんな事を思い出したけれど、今更だ。

エレベーターのドアが閉まって、金子さんの姿は見えなくなろうとしているのだから。

それでも、もう一度金子さんの名前を呼んだけれど、その声は閉まりきった扉にぶつかって床へと落ちた。