狼系王子とナイショの社内恋愛


「これ、まさか止まってますか……?」
「みたいですね」

なんとなく天井を見ながら言うと、返事をした結城さんが、非常電話とかかれた赤いボタンを押す。
そうするとすぐに向こう側から声が聞こえてきた。

『どうしましたか?』
「急に止まってしまったので復旧お願いします。
女性も乗り合わせていますので、なるべく早く」

てきぱきと話す結城さんの横顔を、冷静だななんて思いながら眺める。
エレベーター会社の人はすぐに対処してくれるらしく、遅くても30分以内には復旧できるんじゃないかと話してくれた。

「30分……って長いですよね」
「話してればあっという間ですよ。
心配しなくても、落ちたりしないから大丈夫です」
「私別にそんな心配なんて……」
「顔が真っ青ですよ」

指摘されて、両手で頬を覆った。

結城さんと一緒に乗り込まされたせいで、そっちばかりが気になっていてエレベーターに対する恐怖心みたいなものを忘れてたけど、さっきのガコンで思い出した。



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