狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「デマなんでしょう?」



いつも通りの時間に出勤して、いつも通り仕事を始めようとして、いつもとは違うある事に気づいた。

周りからの視線だ。

顔を上げると、フロアのあちこちから好奇といっていいのか分からないけれど、それに近い視線が私に向けられていた。

どうしたんだろう、と不思議に思いながら居心地の悪さに不快感を感じていると、フロアに入ってきた金子さんが私を見るなり駆け寄ってきた。
そして発声一言目から恐ろしい事を言い出す。

「さっき噂で聞いたんですけど、先輩と佐々山課長ができてるって本当ですかー?」
「……噂って、みんな知ってるの? だからこの視線?」
「そうだと思いますよー。なんかすごい勢いで広まってるっぽいですもん。
誰かが故意的に広めてるんじゃないかってくらい、それぞれの課にまんべんなく順調に行きわたってるみたいです」
「行きわたってるって……」

渡らなくていいのに、そんなもの。
内心ドキドキしながらも冷静を装ってどう対応すればいいのかを考える。

ただの噂だし、私は知りません~って顔をして知らんぷりを決め込めばいいのか。
それとも出所を探して、迷惑だって言えばいいのか……。

色々考えたけれど、時期がまずい。
課長の結婚報告が済んでまだ二週間なのに、私との噂なんて……絶対にまずすぎる。


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