狼系王子とナイショの社内恋愛


「噂を広めた犯人は結城さんじゃありません。
少なくとも私はそう思っています」

はっきりと言った私に、山川さんの表情が驚きから怒りに変わっていく。
そして何かを言おうとしたみたいだったけれど、怒りを浮かべていた表情はまた驚きに戻って。

どうしたんだろうと思って見ていると、後ろから声が聞こえてきてその理由を知る。

「待たせてすみません。高橋さん」

振り返った先にいた結城さんが、近づいて私の隣に並ぶ。
それから山川さんに視線を向けた。

「お疲れ様です。山川さん。
家、こっちでしたっけ」
「……いえ、たまたまこっちに用事があったので」
「そうですか。じゃあ、高橋さん、行きましょうか」

そう言って笑いかけた結城さんが肩を抱いて私を無理やり歩かせる。

戸惑って見上げる私に微笑んだ後、結城さんは顔半分だけ振り返って。
立ち尽くしている山川さんに、お疲れ様でした、と笑顔を向けた。



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