狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「映画でも行こうか」



「呼び出したりして申し訳ない」

土曜日の午前中。
よくふたりで来たカフェに行くと、私に気づいた課長が小さく手を上げて合図をした。

よく来たお店の、いつも座っていた席。
課長の顔に、付き合っていた頃のような笑顔はなかったけれど。

ふたりして呼び出しをくらったのが三日前。
コンプライアンス室の室長は私の話を信じてくれたようで、私が席に戻って間もなくして課長も総務課に戻ってきた。
その姿を見て安堵のため息を小さくもらして、これでもう本当におしまいだと思った。
課長と……優輝と私の関係が、完全に幕を閉じたんだと。

結婚祝いの飲み会の時、何かを言おうとしていた課長の話をきちんと聞けなかったのが、少しだけ心残りではあるけれど、あの時は聞ける状態じゃなかったんだから仕方ない。
課長だって、それくらいの失礼は許してくれる。

そんな風に思って、心の中でこっそりとさよならを告げた二日後だった。
課長から土曜日会えないかとメールが届いたのは。



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