狼系王子とナイショの社内恋愛


「ちょっと待って! 漫画読みにきただけなら別々だっていい……」
「聞いてなかったんですか? カップルシートは20%オフだって。
割り勘にしたらそっちの方が全然得だと思いますけど。
そうなんですよね?」

そう聞く結城さんに、バイトの子がはいと笑顔で頷く。
その頬は赤く染まっているように見えた。

「おひとり当たり、200円ほどお得になります」
「ほら。店員さんもそう勧めてくれてる事ですし」

にこっと笑う結城さんに逆らう気力も残ってなくて、仕方なく頷いた。

それにしても本当になんで私になんか構ってくるんだろう。
本来なら社内でも抜群の人気を誇る結城さんにこんなに構われたら喜ぶべきなんだろうけど。

今の私にはそんな気持ちは微塵もないし、むしろ迷惑にさえ思ってしまう。
それを結城さんだって分かってないとは思えないのに……。

カップに温かいカフェオレを注ぐ私の横で、炭酸飲料をコップに注ぐ結城さんをチラっと見てからため息をついた。



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