愛と正義と敵と【未完】
運命の歯車









「琶歌(ワカ)、紗江(サエ)に琴の稽古をお願いしてもよろしいかしら?」





ここは、将軍さまの親戚である小宮城(コミヤギ)家。


今年、二十一の歳を迎えた長女の琶歌は何事にも評判が良い女人ながらも、未だに婚儀を挙げていなかった。





「紗江にですか? お任せください、お母さま。」





柔らかく朗らかに微笑む琶歌。

そんな姿に母である弥原(ミハラ)も、我が娘に惚れ惚れするも、ホッとするような痛々しさを味わう。



「……のう弥原よ、そろそろ琶歌に祝言を頼み込んでもよいだろうか。」




「戯れ事はよしてくださいな。あの子は優しい子だから感情を押し殺し、何も言わずにただ微笑むでしょう。

私は、そのような娘を見たくはありません。」




琶歌を一目見ようと、
手紙の返事だけでもと、

今日もさぞかし多くの男たちが小宮城家に訪れることになるでしょう。


それでも琶歌は、微塵たりとも気にすることはない。


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