「視えるんです」
ありがとう


………

……




そして、日曜日の朝。

先生は逃げることなく、私の家まで車で迎えに来てくれた。
翔先輩はすでに乗り込んでいて、ニコッと微笑んだ。




「先生、ここからどれくらいですか?」

「3時間」

「え、案外近いんですね」

「そりゃあ、近くなかったら行かねぇよ」

「……ですよね」




うん、半沢先生だもんね。
近いからこそ行くし、遠かったら行かない。

そんな感じがするし、実際にそんな人なんだと思う。




「でもなぁ、高速乗って3時間だから、距離的には結構遠いんだよなぁ。
面倒だからその辺の墓地で済ますか」

「さっさと出発してください」

「……お前なー、少しは俺の冗談にも付き合えよ。
あ、あんなところに浮遊霊っ」

「……先生、早くしてください」

「チッ、つまんねーな」




ブツブツ言いながらタバコをふかす先生を睨みつけると、ようやく車が発進した。




「運転、気を付けてくださいね。
まだ、力が完全に戻ったわけじゃないんですから」

「心配すんな。 もう二度と、ヘマはしねぇから」

「……はい」




フゥ……と息を吐き出した先生は、タバコを灰皿に押しつけ、鏡越しに私を見る。

その後どうだ? と、前に聞いたのと同じセリフで。


< 196 / 214 >

この作品をシェア

pagetop