sound village

推しメン **side神島




「ああっ(怒)もうっ(怒)
何やねん(怒)あのオッサン(怒)

ほんで、何で自分、
このタイミングで
ここに居るねん(怒)」


アスファルトに転がり
毒を吐く柏木に。


「……柏木君、ごめん(泣)」


知らずとはいえ、偶然、
勝敗を決定ずけてしまった
総務のチビッ子が、顔面蒼白で
俺たちに詫びを入れている。


「お前がキー拾わんかったら
俺が取れたはずやのに…」

だから…柏木よ…

その人、小さくても
斐川と同学年でも、
先輩だっていってんだろ…


音村係長の通院同行者を
決めるがため、部長がしかけた
運転手争奪戦は、
先輩社員に聞いて知ったのだが
スプリンターだった過去を持つ
佐藤係長が優位に立っていた。


しかしながら、通行人を交わしての
ディフェンスに俺達が劣るわけもなく、
駐車場に到着したときには、
それぞれ、係長の三方を
きっちり固め足止めする状態に
持ち込んでいた。


『うおぉっ!!テメェら怖ぇよ!
デカイのがガッチリ固めるな!!』
 

人間、誰かを出し抜こうとすると
口数が増えるらしい。


『運転手くらい、俺が行きますよ。
アポは調整してもらえるし。』

『俺、今日、面談ないねんから、
俺が行くのが妥当やと思う!!』


キーを握りしめた係長の右手を
捉えようとしつつも、この人は
性格上、最低、もうワントラップ
かまして来るだろうと睨んでいたのは
俺だけじゃないと思う。



  


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