sound village



…こんな…

微動だにしないヒトを
置き去りにしていけるほど… 

俺は、薄情者のつもりはない。


でも…

部下とはいえ、密室で、
仮にも…男女な…訳だから…


「…俺が居たら…

迷惑ですか…?」


気になるのなら、早々に
退出すべきだろう。


「迷惑?…ギックリ腰で
迷惑かけたのは
こっちなんだけど?」

“何言ってんだか(笑)”と、
いって、係長は笑う。


「…ホントに動けないんですね。」

「おうよ。面目ない…」

「パソコンセッティングします。
何処に置きますか?」

きっと、自分じゃあ設置なんて
できないだろう。
さっきから、見事に動かない事を
除いても…

…頑なに認めないので、
黙っているのだが…

ヒトの事を言えた義理ではないが、
この上司が、機械オンチである事は
俺達の間じゃあ、周知の事実で。


「…お願いしても、いい?」

珍しく、係長が動揺している。

こんな状態で、係長を放置して
帰ったりすれば、ミスミス
柏木にチャンスを与えるなんて
とんでもない失態に繋がる事は
明白で。


「ええ。もちろん。」


ああ…その前に


いくら、佐藤係長が来ると思って
いたからって、鍵を開け放つとか
無用心すぎる。


「危なっかしいヒトだな…」


半ば呆れて、玄関の鍵を閉めたのは


どこかで、予感があったから…

…かも、しれない。





柏木が…来るんじゃないかと…








  




  






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