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「……先生には悪いことしちゃったわね」


少し下を向いて言う芽奈。


「……先生、とはどうなったんだ?
 ピアノはやめないんだろ?」


少し躊躇いがちに将人が聞いた。



すると芽奈は、高校生らしい明るい笑顔を向けて、


「えぇ、これからもピアノは続けるわ。
 たまには、コンクールにも出る。

 ……あたしね、エンターテイナーになりたいの。
 ピアノで人を楽しませたい。
 
 そのためには、技術もやっぱり必要だからね」


と言った。


彼女は喋り方も表情も常に大人びていたので、それは女の私でもドキリとするくらい可愛らしいものだった。



「……じゃあ……それが芽奈の夢……」


……やっぱり、夢を堂々と語る人は格好いい。

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