亡くなった彼女の蹴り
蹴り

二人で繁華街を歩くのに疲れてベンチに座り僕は、軍用コートから安定剤を出して彼女に見せる。



彼女もダウンジャケットから安定剤を出して見せる。


僕は、軍用コートにジーンズ彼女は、ダウンジャケットにジーンズ姿だった。


彼女は、あまりカジュアルな格好をしないのだが僕と会う時は合わせている所が、あった。


二人で安定剤を見せながら笑う。


「貴方と居ると要らないね。」


彼女はそう言うと近くにあるごみ箱に安定剤を投げる。


僕も真似をして投げる。


二人共多少のパニック障害を抱えていた為に安定剤を常に持ち歩いていた。


僕らの共通点は、多かった。


音楽が、好きでお互い考え方が、驚くほど似ていた。


しかし、外見的な共通点は皆無に等しかった。


彼女は、二十代半ばで美しかった。


僕は、四十代で何処にでもいる平凡な男だった。


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