月と太陽
「タケル、いつからそこに居たの?」

そう言うと、タケルは少し考えたフリをして「3秒前くらい」と答えた。

タケルはドアから背中を離すと、こっちに歩み寄り、わたしの肩にポンと手を置いた。

そして、こう言った。

「栗原、ちょっとしずく借りていいかな?」

麗佳は、タケルに自分の名前を呼ばれたことに感動しているように見えた。

「ど、ど、どどうぞ!お好きなだけ!」

タケルは「ありがとう。じゃあ、少し借りて行くよ」と言うと、わたしの腕を掴んだ。

「ちょっと待った。わたしの意見は聞かないわけ?わたし、物じゃないのよ?」

わたしが最後までそう言い終わらないうちに、タケルは「待たないよ」と言って、強引に席から立たせた。

「どこに連れて行く気?」

わたしの問いに首を少し横に倒し、目だけで「あっち」と合図するタケル。

わたしは麗佳に「ごめんね、ちょっと借りられて来る」と言うと、タケルに腕を引かれるままに歩き出した。
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