メイクの魔法
1章

失恋

「香穂、もう俺はお前と一緒にいることはできない。別れたい、1人になりたいんだ。」

突然の壮介の言葉に、香穂は茫然として立ち止まった。

「な、なんで急にそんな事…」

「急じゃない。俺はいつも、仕事が順調な香穂に劣等感を持ってた。香穂の事を嫌いになったんじゃない。だけど、一緒にいると安らぎより辛いんだ。香穂の家にある俺の荷物は捨てていいから。それじゃあ。」

今にも泣き出しそうな香穂を見て、目を逸らした壮介が辛そうに続け、こちらを見る事もなく去って行った。

「そ…うすけ…」

すがる事も、追いかける事もできなかった。

振られたのだ、自分は。

付き合って5年。
大好きじゃなかった時なんてなかった。

バリバリのキャリアウーマンの香穂も、壮介と子供に囲まれて、この先もずっと一緒に過ごしたいと思っていた、そんな時に。



ーーー地面が濡れた。

香穂の涙が落ちる音が静かに響いた。




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