きみだけが好き。


 帰るって……ふたりで?


 ってそんなわけないよね。


「うん、今日はありがとね。 また明日ねー」


 私は教室の入口の方へ歩く。


「……送ってく」


 八代くんに腕をつかまれて、引き留められる。


「そんなっ いいよ! もう暗いし……」


「…だからじゃん。 森田いつもボーっとしてっし」


 わ、わかっちゃうか。 


 ボーっとしてるの…。


「でも……八代くん、帰り遅くなっちゃう」


 勉強もみてもらって、おまけに送ってもらうなんて、そんなの悪いし…。


「何言ってんの? 俺、男だし平気」


 ドキッ。


 なんか今、ドキッとした…。


 なんか、八代くんといるとドキドキしっぱなしだなー。


 そこまで否定する理由もなくなっちゃった。


「……じゃぁ、今日だけお願いします…」


 私は八代くんを見て言った。



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