きみだけが好き。



 人込みを抜けて歩く私たち。


 途中、カップを落としてしまったことに気づいたけど、今はそのことよりも繋がれた手に意識が集中する。



 そろそろ午後8時になるのか、花火が始まるというアナウンスが流れた。


 八代くんは、何も言わずただただ歩いていく。


 どこに行くんだろう…?


 そう思ったのは一瞬で、草が生い茂っている芝生に着いた。


「八代くん…?」


 人は私たちとほんの2,3人しかいなく、お祭りから少し離れてるこの場所。


「ここさ、花火が見やすい場所。 てか、俺と健と由紀の秘密の場所。 よくここで遊んでた。 そんで花火見たりした」


「そんな場所に、どうして私を…?」


 秘密の場所を、私なんかに教えていいのかな?


「森田だから」


「え…?」


 森田だからって、え? どういうこと?


「そろっと花火始まるな。 見ててみ」


 それから数分。




╼╼╼╼ヒューーッ  ドンッ



「うわぁああ!! すごいッ きれいっ」


「な? ここは格別」


「ほんとだね!! このお祭り、毎年行って花火見てるけど…こんなにきれいに見えたの初めてっっ!!」


 花火は、すごくきれいで、今までみたどんな花火よりも輝いて見えた。


 きっと好きな人と見てるからなのかも。


 喜んでる私の隣りで芝生に寝転がる八代くん。


「森田も寝てみ?」


 八代くんに勧められて、私も寝転んでみる。


 
< 81 / 288 >

この作品をシェア

pagetop