private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 「距離置いた方が」

 「待って! うん。こういう普通じゃないの、けっこう楽しいし
 ……だからもう少しこのまんまで」

 「遊びってことか?」

 「え、違……」

 「将来俺は会社に有益になる人物と結婚することになる。
 そいつと婚約したら美希とは即別れることになると思う。
 だからお前が遊びのつもりでいてくれるなら、つき合ってもいいよ?」


 お見合いの話しが来てるってことは、婚約はきっと、もうすぐそこってことだ。

 寿は私が寿のこと本気じゃないって気づいてて、だけど私のこと、
 本気で想ってくれてるかもしれなくて。

 この時点でもう、私にとって寿のことは遊び。

 彼氏だっているし。


 「マジんなんねぇって約束できるか?」


 私はこのまんまでいいってことじゃん。

 寿が不利すぎるけど、それは…………

 本当に寿が、私のこと好きだから?


 「あんたは、それでいいの?」

 「今までもそうだった」

 「奈々のときも?」

 「新山は別」

 「何で!?」


 どうしてか、私は反射的に叫んでしまった。


 「言っただろう? あいつは特別なんだ」

 「私と奈々といたら、寿はどっちを選ぶ?」

 「愚問だ。美希に決まってんじゃん」

 「なのに奈々は特別なの? どうしてっ!」

 「さぁ……俺にも分からない」

 「私、寿とはつき合わない」

 「嫉妬してくれてんの?」


 寿が嬉しそうに言う。


 「そっそんなんじゃないっ!!」

 「残念。美希……短い間だったけど、ありがとな。けっこう楽しかったぜ」


 そう言って電話を切った寿の声、寂しそうで切なかった。

 どうしよう……胸がドキドキしてる。

 私、嫉妬してたのかもしれない。



 何で? 







 ―――――――彩並寿が、好きだから。
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