private lover ~大好きな人の前で他の人に愛を誓う時~
 でも総体明けの金曜日、朝のHRが終わると、

 奈々が浮かない顔で私のところまでやってきた。


 「ミッキー、寿クンから何か聞いてない?」


 彩並寿がGW明けてから三日連続で欠席。


 「聞いてないよ? セレブなんだし、長期旅行中じゃない?」

 「旅行には行かないって言ってたよ」

 「実家がLAじゃなかったか?」


 個人戦で優勝、団体戦で準優勝の空手家

 星哉が思い出したように言う。


 「そうだそうだ。確かそんなこと言ってたよね」


 明るく言ってみたけど、それでも奈々は沈んだまま。


 「家に行ってみたら?」

 「いっ家ぇっ?」

 「彼女なんだから、行ったっていいんじゃない?」


 そういうわけで私は放課後、奈々と一緒に寿の住むペントハウスに行くことになった。

 星哉は部活だから事後報告っていうことになる。


 「今日くらい休めばいいのに」


 って言ったら、


 「今日こそ休めない」


 って、すごく嬉しそうに言われた。

 勝ったからこそ、言える台詞だ。


 「星哉、部活頑張ってね」

 「おう」


 爽やかに笑う星哉と玄関で別れて、私は奈々と寿の住むホテルへと向かう。




 「迷惑じゃないかな……」

 「ないない」


 励ましながら歩いて、電車に乗って、バスまで使った。

 車でばっかり行ってたから、あんまり感じなかったけど、意外に遠い。
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