アフターレイン


数ヶ月ほど前だったか。



親父がどんよりとしけた面をして帰ってきたことがあった。

いつもは仕事から帰ってくるなり熱烈愛情表現をうざいくらいかましてくれるのに、その日に限ってはそれがなくて。



理由を訊けば、「どうしよう。パパ、猫拾っちゃったよ」と来たもんだ。



しかし拾ってきた当の本人は全く役に立たず無駄におろおろするばかりで、実質猫を病院に連れて行ったり世話したりしたのは俺と直己だった。

インターネットで調べたり、猫の育て方の雑誌を買いあさったり。



で、あまりにも何もしない親父にいい加減腹が立って「お前も何かしろよ」と強制したら「パパは可愛がり担当だから」とか言いやがった。

あの時は本気で追い出してやろうかと思ったな。猫じゃなくて、親父を。





「でも今猫飼ってなくない? その子はどうしたん?」

「親戚で欲しいって言う人がいたから、そこんちに譲ったよ」

「へぇー」

「ちょくちょく写メも送られてくる。今じゃ立派なデブ猫らしいよ」

「ははっ」
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