アフターレイン
 皐月はふるふると首を小さく横に振って、ゆっくりと目を閉じた。





「あたし、もう一度久志たちと家族になりたい」





 そしてまたゆっくりと目を開きながら、じっと上目遣いで俺を見つめてくる。

 息が、詰まった。



「それは……」



 ──今の家が嫌だから?



 喉まで出掛かった言葉を、すんでのところでごくりと飲み込む。



 訊きたい、でも訊いたらいけない。たぶん。

 胸の中でぐるぐると一人巡りで考えていると、皐月はふふっと鼻を鳴らした。





「好きだからだよ」





 ……。



 〝好きだからだよ〟



「え?」



 今なんて言った?
< 88 / 108 >

この作品をシェア

pagetop