黄色い線の内側までお下がりください

 黄色い線の外側に視線は固定され、その先、線路の間にあざみの笑う顔を見た。

 肩を落として背中を丸めて立っているあざみの髪は、なびかない。


 顔には綺麗な笑顔。




 警笛が連続して鳴らされてうっとうしい。



 機械的なアナウンスが入る。




 すぐそこ、数メートルのところに、


 冷たくて重たい鉄の棺桶、もしくは巨大な焼却炉が迫ってきている。


 そんな電車よりも恐ろしいものが宮前タイラの目の前にある。




 あざみが後ろで囁いた。




「つまんない。やっぱ快速じゃないほうがよかったかな」





 その声が宮前タイラが聞くことになる最後の言葉となった。


 彼女が最後に見たモノ、



 それは......

                                  


 殺人鬼のような電車の顔、




 それと、十字を切る姿だった。
                                                                                                                                                                            


  
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