黄色い線の内側までお下がりください

「店長......これ」

 震える手で新聞を持つ桜は、記事を読みながら他のことを考えた。

「何? どうしたの? なんでそんな震えてるわけ?」

 手を休めることなく傍らで桜の呼びかけに答える。

「これって、だって......」

「どれ?」

「これなんだけど」

「何? どうした?」

 無言になる桜の目の前には店長の顔。気になって手を休めて桜の前に両手をついた店長は桜の目をじっと見た。

「これ、まさかと思うけど、知ってる?」

「ん? あぁ、最近多いんだよな。ここなんかの曰く付きなんかじゃないの?それがどうした?」

「.........タイラ、バイト来てる?」

 店長の顔が曇り、眉の間に皺が入る。

「まさかこれが? とか思ってねーよな? 確かにタイラちゃん最近無断欠勤続いてるんだよ。電話しても出ないし、実家にも帰ってないみたいでちょっと問題になってるのは確か。お前が来た時にでも聞いてみようかって思ってたとこ」

「やっぱり。なんかおかしいと思ったんだ」
 
「おいちょっと待てよ」

「そういうことなんだ」

「まさかお前......」


                                                                                                                                                     

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