黄色い線の内側までお下がりください
【ロク】
【ロク】 藤が丘 あざみ
『だから言っちゃダメだって言ったでしょう』
「ごめんなさい」
『そんなところもまたいいけど。でもいい? これで最後』
「ちょっと残念」
『癖になったら困るから』
「ならないですよ」
『それならいいけど? どこまで信用しようか』
「寂しくなりますね」
『忘れないでね』
「どんな意味で?」
『そういう意味で』
くすりと笑ったあざみはその場に富多子を残して一人で消えた。
富多子はホームに一人たたずみ、またすぐに戻って来るだろうと思っていたあざみを待った。
終電まで待ったが、結局彼女は戻ることはなかった。