黄色い線の内側までお下がりください

 テレビの中では昔の外国映画の続きが流されていて、玄関の電気もじじじっと音を立てながらついたり消えたりしている。


 額の汗を手の甲で拭ってTシャツで拭き、水を飲みに台所まで歩く。




 その後ろを、血で真っ赤に染まり、ぐじゃぐじゃになった顔に笑みを讃え、関節の動きとは逆に折り曲がっている足や手や首。

 それをひきずるようにしてぎこちなく歩く血まみれの女性が一人。

 
 桜の後ろにべったりと張り付いている。



 指のない手で大事そうに抱えているのは、







 何かで切り裂かれ、血液で汚れて茶色く変色し、ぼろぼろになった汚いバッグだった。
                                                  
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