「約束」涙の君を【完】
賢人くんの言葉に、杏が手を叩いて爆笑した。
「んなわけないじゃん。
どう見たって意識し過ぎているだけだよ。
あおいは素直じゃないからね……」
「もう俺、へこむわ……」
賢人くんは髪を両手でぐしゃぐしゃにした。
「賢人くんは、あおいが好きなんだよ……ね?」
私が聞くと、賢人くんは顔を上げた。
「やっぱ優衣ちゃんだってわかるよな」
賢人くんの言葉に杏が深く頷いた。
「ね。優衣だってわかったでしょ?
賢人はねぇ、中学の頃からずっとあおいに片思いしてんの。
こんなにわかりやすいのに、
つい最近告白されるまで、あおいは賢人の気持ちに気づかなかったっていう……ね」
「こ、告白したの?」
「なんかさ、
あおいと部屋で二人っきりで勉強していたらさ、
こう……勢いで……なんか……
んでさ、一応考えてくれるっていい感じの返事だったんだけど……あの時は」
「そうだったんだ……」
「でもなんか、告白してからさらに、俺を避けるからさ……
まじでへこむわ……」
「大丈夫だって!賢人!
いつもの調子でガンガン行けって」
杏はお弁当の袋を持って立ち上がり、
賢人の肩をポンと叩いてから、
机を元の場所に戻した。
「優衣ちゃんはどう思う?」
えっ?
どうって……私は花火大会の時、二人を見た時から……
「すごくお似合いのふたりだから、大丈夫だと思う!」
賢人くんは、「あはははっ」と笑って、
「ありがと」って、立ち上がり、
あおいの机を元の向きに戻した。
二人、うまくいってくれたらいいな……
となりの祥太を見たら、
祥太は頬杖をついていて、
目が合ったら、優しく笑ってくれた。