「約束」涙の君を【完】
祥太は、首元が大きく開いた白いTシャツに、
グレーの七分袖のカーディガンを羽織って、
ベージュのカーゴパンツを履いていた。
私をじっと見つめて立ち尽くしていた祥太は、
両手をズボンのポケットに入れ、
私の大好きなくしゃっと笑うかわいい笑顔を見せた。
そして、一度下を向いてから、こっちに歩いてきた。
軒下に入り、
縁側に立っていた私の顔を、ちらっと横目で見てから、
縁側に上がってきた。
「祥太、優衣かわいいだろ」
おばあちゃんがちゃぶ台を拭きながら言った。
「あぁ……」
「惚れ直したか」
おじいちゃんが新聞の上から顔を出して言った。
「はははっ……」
祥太は下を向いて、自分の髪をくしゃくしゃっとして笑った。
「今日、ちょっと遠くまで行くから、
帰り遅くなるけど、
ちゃんと家まで送るから」
おばあちゃんは、立ち上がった。
「そうかぁ。どこまで行くんだ?」
祥太は少し考えていた。
「ちょっと……なるべくあまり遅くならないようにするよ」
「わかった。気をつけてな」
祥太は、向きを変えて、縁側から外に出た。
「待って、玄関からサンダル持ってくるから」
私は、玄関に行って少しヒールの高いサンダルを持ってきた。
サンダルを履いて立ち上がると、
いつもよりも少し、祥太の顔に近づけた気がしたけど、
まだまだ祥太の方がずっと背が高かった。
祥太は庭先に停めた自転車のカゴからボディバッグを取ると、背中に背負った。
「バスで駅まで行くから」
祥太は私の顔を見ないで、手を繋いできた。
二人で川沿いのバス停まで歩いたんだけど、
その間、祥太は全然しゃべってくれなくて、
「祥太?」って顔を覗き込んだら、
顔をそらして、笑った。