「約束」涙の君を【完】



おばあちゃんの家での暮らしが始まった。

おばあちゃんは、昔お母さんが使っていた部屋を片付けて、


私の部屋にしてくれた。




おばあちゃんの家にくる人に、いろいろと聞かれても、


答えられないのが辛くて、


ほとんどを自分の部屋で過ごしていた。



それでもおばあちゃんは、



「なんにも考えんな。

ゆーっくり、体治していけばいい」と、優しく笑って、


いつもそう声をかけてくれた。




おじいちゃんは、あれから何度か東京に行っていた。



いろいろと、高校の事とか手続きが大変なんだと思う。




おばあちゃんの家での暮らしは、


びくびくしないでトイレにいけること、


明日を不安にならないで眠れること、



3人でご飯を食べられる事、





それができることで、


少しずつ安心感を覚えていた。







「高校なんだが……」




おばあちゃんの家に来て一週間ほど経った日の夜、

夕ご飯を食べながらおじいちゃんが言った。




「優衣の東京の高校は、頭がいい学校みたいだから、


こっちの高校なら、どこでも受かると思うがな。



東高校の校長先生が、じいちゃん知り合いだから、

東高校はどうかと思うんだが。


家からも近いしな。

優衣のことを話したら、試験受けられるようにしてくれるっていうし、


祥太って覚えているか?




祥太も通ってんだ、東高校に。


知り合いが一人でもいた方が優衣も心強いと思ってな」






< 64 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop