「約束」涙の君を【完】





知らない声に驚いて、

覆っていた両手から顔を出した。





すると、2、3段下から、

首を傾げて大きな瞳で、

私を見上げている男の子がいた。



くったりとしたタンクトップ


日に焼けた顔


短い髪は、汗でびっしょり




私と目が合うと、一瞬目をそらして、


今度は上目で睨んできた。




「お前足からすっげー血出てんじゃん」




石段にしゃがんだまま自分の膝をみると、


血が足首に向かってダラーっと流れていた。



「ん」




そう言って男の子は、なぜだか不貞腐れながら、


私に手を伸ばしてきた。





「ん!!」




一段上ってさらに手を伸ばしてきた。




その手は、少し泥で汚れていた。



口をへの字にして、手をぐっと伸ばしてくる。






「え...」




私が少し戸惑うと、ポツポツっと雨の音がしてきた。



でも、ここは木々が屋根がわりになっていて、


雨はあたらない。




「早くしねーと、ドシャーっと雨降ってくるぞ!ほら!」





なかなか動かない私に、しびれを切らして、


男の子はもう一段上ってきた。



「わ!そこ!セミ!2匹もひっくり返ってるから!




踏む!踏んじゃうよ!!」





セミに気づかない男の子に思わずそう叫んだ。





男の子は「は?」と言いながら、一段下がった。



そして、腰を屈めてセミをじっくり観察し始めた。


...そんなに間近でセミを見るなんて、信じられない。




そして男の子は何を思ったかセミを掴んだ。


しかも両手に一匹ずつ。



そして、「ほら」と私に差し出してきた。






「ぎゃあああああ!!!!!」


























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