受胎告知Fake of fate【アンビエンス エフェクト第二のマリア】
 「辛過ぎる」
俺は望月一馬主席につい弱音をはいた。


「辛い時こそ前を向いて一歩を踏み出すんだよ。辛いと言う字に一を足してみなさい。幸と言う字になるから」

俺はその言葉に驚き、頭の中で辛いと言う字に一を足して幸にしていた。


「辛いからこそ、乗り越えるんですね」
俺は主席の目を見て言った。


「喬君なら出来る。マリーに選ばれた君なら出来る。でも焦ることはない。まずマリーを幸せにしてやってくれ。有事対策頭脳集団のことはその後でいい」
主席は優しかった。
まず俺とまことの心を癒すこと。
それに重きをおいてくれていた。


「人生の答えは自分の心の中に眠っている。それぞれの中に」
独り言のように、一馬がもう一度呟いた。


(そうだな。答えはそれぞれ違って良いんだ)

俺は一馬の言葉を理解しようとしていた。
でもそれに気付いて、少し戸惑ってもいた。




 有事対策頭脳集団の本部敷地内に、天の川への架け橋と呼ばれている大きな建物がある。
その手前にはピラミッドを型どったオブジェ。


そう……
其処は身元の判明されずに神に召されて逝った仲間の墓だった。
魂を宇宙に返すための施設だった。


三途の川を天の川に例えたのだ。
眞樹と奈津美の遺灰は一番奥に納められた。
其処はいずれは主席も入るであろう場所だった。


この場所を、何時か心の拠り所に出来るように俺はまず教団生との絆を深めていかなくてはならないと思っていた。




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