ほんとの笑顔が見たかったんだ
雨雲
7月最後の今日は、朝から曇り空。

夕方からは雨が降るとか。

龍星が実家に帰ってから今日で5日目だ。

その間、龍星と連絡を取ったのは、一昨日、じゅなのトークモードのIDを教えたあの時だけだ。

「あー。すげー暇」

リビングのソファで横になり、オーディオプレーヤーで音楽を聴きながら呟いた。

龍星のヤツ、夏休みの間は俺の家にいろって言ってるのに、遠慮して帰ってんじゃねぇよ…。

俺、暇すぎてヤバイわ。

と言うのも、正直、俺は友達が少ない。

っていうか、はっきり言って友達と呼べるのは龍星くらいしかいない。

だから、今まで、夏休みに友達と遊んだ記憶がほとんどない。

まぁそれが寂しいとかは別に思わないけど。

「"すげー暇"なら、ママ、これから買い物行くんだけど空も行く?」

好きな曲がサビに差し掛かった時、急にオカンにイヤホンを抜き取られた。

オカンは驚く俺を見て笑っている。

「何すんだよ!行かねーよ!」

「良いわよ遠慮しないで!今日は特別に空の好きなチョコレートパフェごちそうするから!」

「いらねーよ!さっさと行って来い!」

オカンを追い払うように言って、俺は再びイヤホンをつけて音楽を聴き始めた。

そんな俺を見て、オカンは拗ねたように

「空のバーカ!もう今日はパンツ洗ってやんないから!」

と、言って出ていった。

なんだよそれ…ガキかよ。
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