ほんとの笑顔が見たかったんだ
夏祭り

ルーズリーフと筆箱を持って、私はソラの家の玄関のドアを開けた。

「いらっしゃい!」

楓さんが、笑顔で迎え入れてくれた。

「こんにちは!」

私もニコッと笑顔で返す。

「昨日はありがとね!急に空とりゅう君までお邪魔させちゃって…でもどうしてもサツキさんにはりゅう君に会って欲しかったんだよね…」

そう言って、楓さんは苦笑いを浮かべた。

「楓さん…"ありがとう"はこっちのセリフだよ…。ほんとにありがとう」

楓さんの目をしっかり見つめる。

"何言ってんの!"と、楓さんは照れた。

そして、

「さ、上がって!あの子達、空の部屋にいるから!後でおやつ持っていくね!」

そう言ってくれた。

私は靴を脱いで、"おじゃまします"と言ってソラの部屋に向かった。


楓さん…。

私、ママに聞いたんだ。

楓さんも、近所の人が話していた"龍星君の噂"の事、知っていたんだね。

それで、心配性のママの事だから、その噂を信じてしまって、私と龍星君を遠ざけようとしているんじゃないかって心配して、わざわざママに話しに来てくれたんだってね。

龍星君の事で、近所の人と揉めた事も聞いたよ


それをきっかけに、龍星君に禁煙するように言った事も聞いたよ。

私と龍星君をもう一度つなぐために、楓さんは素直に、真剣にママに話してくれたんだよね。


楓さん、ありがとう。
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