ほんとの笑顔が見たかったんだ
嫉妬
リビングのソファーに横になって、ぼんやりとテレビの画面を見つめる。

番組の内容なんてひとつも頭に入ってこない。

「空!お昼ごはん食べたら宿題する約束でしょ!りゅう君、もうお部屋行ったよ?」

「うっせー…」

食器を洗いながら言うオカンに適当な返事をする。

あの夏祭りの日から6日…俺はずっと心に穴があいた感覚になってしまって、そこから抜き出せれずにいた…。

ずっと好きだったじゅな。

明るくて、真っ直ぐなじゅなの事が俺はずっと好きだったんだ…。

だけど、そんなじゅなが好きなのは、俺の友達の龍星…。

ずっとじゅなを見てきた俺には、すぐに分かった。

龍星に笑いかけられると、顔を赤くして目をそらしたり、龍星と喋っている時、すごく嬉しそうな表情を浮かべたり…龍星に触れると顔を真っ赤にして固まったり…

あー、じゅなは龍星の事好きなんだな…って自然と思えた。

じゅなにだって好きなヤツはいてもおかしくない…って思ってたけど、よりによってなんで龍星なんだよ…。

"俺に出来る事あったらするし"とか、精一杯かっこつけた自分が情けない。

「ソラ、宿題しねぇの?」

俺の部屋で先に宿題を始めていたはずの龍星が、リビングに来て話しかけてきた。

「だるいからまた後でやる…」

龍星に背を向ける。

「ソラ、もしかして体調悪いの?」

「別にそんなんじゃねぇし」

「なんか元気ねぇな…なんかあった?」

「なんもねぇよ」

つい、素っ気ない態度をとってしまう。

なんだよ俺…これじゃまるで龍星に八つ当たりしてるみたいじゃん…。

「俺、ソラに色々助けてもらってばっかじゃん?だから、なんかあったら俺に相談してよ。力になれるか分かんないけど…」

素っ気ない態度をとる俺に、龍星はそうやって言ってくれた。

「マジでなんもねぇから。ちょっと寝るわ。俺の事は気にすんな」

だけど俺は、優しく言葉をかけてくれた龍星に背を向けたまま冷たく言ってしまった。

大人気ない自分にイライラする。

「そっか…」

ポツリとそう言って、龍星はその場を去った。
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