猫又四郎の奇怪幻想見聞録

「ところで野良さん。本、久々にどうですか?」

「え? ど、どうって…」


なんのことか分からず狼狽える私に、「ああ、そういえば今の野良さんは…」と小さく呟いた猫又くん。


あくまで小さく呟いたつもりだったんだろうけど、私には丸聞こえだった。

だから尚更、なんのことだかサッパリである。


「猫又くん…?」

「ああ、いえ、なんでもありません。そうですね…。じゃあ、野良さん。
面白い話、聞きたくありません?」



妖艶に微笑む彼に

決してNOとは言えなかった。

断る術(すべ)を、私は知らない。

だから思わず。
そう、思わず。


「う、ん…。聞かせて、猫又くん」

「ええ」


彼の存在意義を
奮いたたせてしまったのだ。


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