新 抱かない男の見分け方
「私たち、20年もセックスしていないんだわ。このままいったら一生しないんじゃないかしら。それって、寂しい。このまま男性のぬくもりを感じないで女の人生を終えていくのかしら……」と、最後のあがきが出てくるのです。
 鏡をのぞくと、濃くなった法令線、白髪交じりのヘア、鶏のような首のライン、元気のない耳たぶ、かさついた唇。女性としての終焉を感じる頃に、「なぜ、若いときにもっとセックスを楽しまなかったのか」と後悔の念が泉のようにわき出してきます。女として輝いていた頃には想像もつかなかったような“セックスへの執念”に直面します。 指先で唇に触れて、「最後にキスしたのは、いつだったんだろう。もう誰からも口づけされることのない唇」と、唇に謝りたい気持ちになります。
 弱々しく下を向いた乳房を見つめて、「20年も男性に触れてもらえなかった私のおっぱい……」と切なさがこみあげてきます。 そうなってくると、夫の自分への愛が疑わしくなってきます。


「夫は私のことをどう思っているんだろう。たんなる同居人としか見ていないんじゃないかしら。もし本当に愛しているなら抱いてくれるはずだもの」

「産後、抱いてくれなくなった夫はどう処理していたのかしら? もしかして外でしていた?」


などなど。


 どんなに経済的に恵まれていようと、かけがえのない子どもたちがいようと、ひとりの女性として愛されていないというヒリヒリとするような乾いた感覚を潤すことはありません。自分に指一本触れることなく、背中を向けて眠る夫を見て、とめどなく涙が流れるのです。 ここで、しょうがないと受け入れ、そのまま淡々と老いを迎える女性と、あきらめきれずに悩んでしまう女性とにタイプが分かれます。
 もともとセックスは苦手で、したくなかったという女性はほかに趣味や生き甲斐を見つけて『なくてもよし』の人生を選びます。女性としては愛してもらえなかったけれど、家族として大切にしてもらったから感謝という女性もいます。それはそれでありなのです。そうです。性の欲求が少しでもある女性が、悩み始めるということです。
< 111 / 120 >

この作品をシェア

pagetop