意地悪な彼が指輪をくれる理由

腕も脚も細くて、背も伸びたから、モヤシのようだと毎日からかっていた。

すると瑛士は、お前にはモヤシというボキャブラリーしかないのかとバカにした。

定期テスト前は、必ず成績優秀だった瑛士に助けを求めた。

すると彼は、これだからバカはとか何とか言いながらもちゃんと教えてくれた。

瑛士は私が好きだった。

もしかしたら瑛士も、自らが秀士先輩の弟だということを利用して私と過ごしていたのかもしれない。

今の今までこんな考えに至ったことはなかったけれど、そうだったら嬉しいな。

私のことを好きだったということを実感できて、嬉しいな。

瑛士を好きになるまで、彼が私を好きだったなんて信じられなかった。

だけど、今思い出せば、記憶の所々にその証拠が残っている。

だから瑛士も、もっともっと思い出せばいい。

私のことを好きだった中学時代を思い出せばいい。

私のことを好きだった気持ちを、ぶり返せばいい。

ああ、こんな都合の良い願望を抱くなんて。

私はまだまだ中学生みたいだ。




< 120 / 225 >

この作品をシェア

pagetop