意地悪な彼が指輪をくれる理由

秀士先輩は、みんなのアイドル的な存在だった。

男女問わずに人気で、カリスマだった。

秀士先輩を慕っていたのは私だけではない。

碧もその一人だ。

もちろん恋愛的な意味ではなく、兄貴的な意味で。

秀士先輩が来てくれるとわかったら、きっと碧も喜ぶだろう。

「ほんとっ?」

私、今どんな顔をしているのかな。

ちゃんと素直に喜んでいる顔が作れているかな。

「超楽しみにしてるね!」

私はとびきりの笑顔で手を振り、瑛士の部屋を出た。

瑛士は何とも言えない複雑な表情をしていたけれど、口だけは笑っていた。

秀士先輩が来る。

なぜそれを今の今まで私に言わなかったのだろう。

急に決まったから?

それとも、言いたくなかったから?

中学時代、恋い焦がれた男にもうすぐ会える。

今現在恋い焦がれている男に連れられてやってくる。

とても嬉しい。

でも正直、怖くもある。

私の心はどう動くだろう。

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