意地悪な彼が指輪をくれる理由





これまでのいきさつを一言でまとめると、こうなるらしい。

「ヤリ逃げ」

その言葉に、私はいずみをじろりと睨みつけた。

「そんな言い方しないでよ」

あまり強く否定はできないけれど、そう思いたくない。

酷いケンカをしたから会わなくなったのであって、逃げられたわけではないと信じさせて。

だって二人のときの瑛士は優しかった。

……なんて、バカか私は。

ベッドでの戯れ言を信じ縋りついてるなんて、終わってる。

典型的不幸で可哀想な女だ。

「二次会の時の瑛士を見てたら、もしかして瑛士も真奈美のこと好きなのかなーって思ってたんだけどね」

「え? え? ほんと? なんで?」

そして都合の良いコメントにまで縋りつく。

28にもなって中学生以下だ。

「なんでって、そうねぇ。瑛士、ずっと真奈美を見てたから」

「私が司会やってたんだから、会場にいた人はみんな私のこと見てたでしょ」

「それもそうね」

期待するんじゃなかった。

ぬか喜びって、意外とダメージが大きい。

「やっぱ好きな男とは、付き合うまで体の関係なんて持っちゃダメなのよ」

それはごもっとも。でも……

「好きになったの、した後なんだもん」

「よっぽど良かったの?」

「そういう意味じゃない!」

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