意地悪な彼が指輪をくれる理由

アリュールのダイヤモンドは読書灯に照らされて妖艶に輝いている。

店で見るのとは少し違う表情。

薄暗いこの部屋で見ても、このリングは美しい。

輝きを堪能していると、ケースがパタリと閉じられてしまった。

「何よ。見てたのに」

「そんなの、職場でも見れるんだろ?」

そのままケースは枕の横に転がされてしまった。

広い部屋に見合わない、狭いシングルベッド。

二人で寝転がっていると必ずどこかしらが触れ合う。

ただでさえ眠りにくいこのベッドで、瑛士は更に体重をかけてきた。

「ちょっと、重いんだけど」

「そうか?」

「そ……んっ」

「真奈美の肌って、触ってると気持ちいいな」

「もうっ、ほんとバカ」

私たちはこの晩、朝方まで互いを抱き合った。

私は瑛士の未練を吸収し、瑛士は私の涙を飲み込んだ。

ただ残念ながら、互いの傷はまだ癒えていない。




< 40 / 225 >

この作品をシェア

pagetop