もっと傷つけばいい
――越えてしまった、と思った。

あたしとソウの間に敷かれていた境界線を越えたらいけないと思っていた。

なのにソウは、それを越えた。

当たり前のように“ナギ”と呼んで、あたしの唇を塞いだ。

――もっと傷つけばいい

だけど、それに対して平気でいる自分がいた。

本当はショックを受けるべきだと、あたしは思う。

なのに、自分は平気だ。

まるで、ソウの方から境界線を越えることを望んでいたと言うように。
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