もっと傷つけばいい
「何か用事だったの?」

質問してきたあたしに、
「…いや、何も」

ソウはソファーに腰を下ろした。

その様子に、あたしは心の中でホッと息を吐いた。

これ以上のことを聞かれなくてよかった。

これ以上のことを問いつめられなくてよかった。

ホッとした。

助かった。

それ以上のことを彼に聞かれたら、あたしは何を言っていたのだろう?

たぶん、あたしは喋っていたかも知れない。

写真の女の人は誰だ、って彼に聞いていたかも知れない。
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