夢への道は恋の花道?
イディアム王子はクスクス笑いながら、ミチルを後ろから抱きしめた。


「ま、待ってください、王子!そ、そんなこと急に・・・」


「日本の女の子は身持ちが硬いっていうけど、ほんとだね。
でも、その分落としがいがありそうだがね。

このくらいやらないと・・・僕の妻になるかもしれない女にディープキスされちゃうかもしれないからね。ふふっ」


「ええっ!!(ま、まさか王子は柏木さんの面接のときの・・・みんな知ってるの?)」


「たった2日で君には興味がわいちゃった。
これからが楽しみだ。ほんとに。

それに1か月後から他国の王子たちと親善テニスが始まるから、甘い話ばかりもしていられないしね。

勝ちにいくからとはいわないけど、軽いラリーはできるように練習しておいておくれよ。」


「ラリーですか・・・。テニスですか・・・。はぁ。」


「うん、あまり得意でなくてもいいんだよ。相手がこっちの実力を見極めてあわせてくれるだろうからね。
まぁ詳細は、こっちに勢いよく走ってくる男にきいておいてくれ。
あははは。」


イディアムはスッとその場からどこかへ立ち去ってしまった。

走ってきた柏木の話では、ミチルと話した後で王妃のところへ行く予定になっていたらしい。



「王子とキスできてよかったですね。」


「え、ええ。」


「うまくできなかったら、もっとお教えしなくてはいけないかと思いましたよ。」


「いえ、もう結構ですから。(お教えって・・・この人たちの関係って何なんだろう?)

それより、親善テニスの練習って王子が・・・。」


「ああ、明日お話しようと思っていたんですけど、近隣の国々の王室の方々はよく親睦を深めるのにテニスやスカッシュをされたりするんですよ。

今回は会場が我が国のテニスコートですので、国を代表する方々がやってきて王子とプレイなさいます。

そして今回は王子がお妃候補選びを公表なさっておいでですので、お妃候補の方々とミックスダブルスで参加ということになりました。」



「ミックスダブルスって・・・男性と女性なんですか?」


「もちろん!って・・・あれ?ミチル様はテニスをご存じないのですか?」


「テレビでは見たことありますよ。ルールもなんとなくはマンガで知ってるんですけど、私の通ってた学校ってテニスは盛んじゃなかったし、うちは裕福ではなかったですから、『テニスなんかやる暇あるんだったらバイトして来い』な家で・・・。

あっ!は、はずかしいです・・・。ごめんなさい。」


「そうだったのですかぁ。ってことはボールもじっくり触ったこともありませんよね。」


「はい。私は欠場させていただ・・・」


「それはできません!親善試合は、候補の女性を周りに知らしめる効果もあるのです。

例えば、イディアム王子が候補のどなたかとご結婚されたとして、他の候補の皆さまは申告していた願いが聞き届けられてその後は自由の身となることはご承知のとおりですが・・・。

近隣諸国の代表の方々のお目にとまった元お妃候補の女性はそのいずれかの国のお妃とならえる方も多いのですよ。」


「な、なんですってぇーーーー!そんなすべり止め制度があるんですかぁ?」


「いや、そんなすべり止めなんてこと言っちゃいけません。
半年のうちに我が国での教育課題をマスターされたお嬢様方はどこに出してもはずかしくないレディになっているはずなのですからね。

このシステムは諸外国からもかなりの高評価を得ているのですよ。」


「なるほど・・・。お妃養成所ってわけですね。
ってことは、私なんてぜんぜんお披露目ではみっともない限りなダメレディじゃないですかぁ。

どうしよう・・・。1か月後に試合なんてできるわけないですよぉ。」


「いえ、できるようにしてみせます!」


「えっ?だって誰に教えてもらえば・・・。まさか・・・?」


「もちろん、私が時間の許せる限り、みっちりと特訓してさしあげますよ。
ご安心ください。」


「と、とっくんですか・・・。で、でもかしわ・・・いえ、キョウは執事業務を取り仕切っている身なのですよね。

とてもそんなスポ根コーチなんて時間とれるわけないのでは・・・。」


「それも大丈夫です。普通の執事業務と会社の仕事をする私の代わりなどちゃんと居りますから、それはご心配なく。
親善試合でのお相手の皆さますべてに好印象を持っていただけるようなプレイとマナーをお教えいたしますから、明日からがいっしょにがんばりましょう!」


「うぇ・・・うえええええ・・・はい。」
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