夢への道は恋の花道?
温もりは嘘を見破れるか?
響は疲労のせいで風邪をこじらせて高熱を出していた。

ミチルの家で布団に転がされても目をあけることはなく、解熱剤のせいでかなりの汗をかきながら、唸っていた。


「かわいそうにねぇ。男の人っていろいろストレスを抱えてしまうから、たかが風邪でも大変なことになることがあんのよ。」


「でもお姉ちゃん、ここに連れてくるなんてやるよね~。
なんて説明してくれるのかが早く見たいなぁ。ふふふ」


「イヤラシイ笑い方はやめなさいって。
お姉ちゃんの顔見てると、そういう感じじゃないってわかるでしょうに。

あの人はお姉ちゃんの大切な人に違いないよ。」



「うん・・・ってことはさぁ。私のお兄さまになってくれるのかも~~~
いろいろおねだりしたいなぁ。」



「これ、ミナト。」


「ごめ~~~ん。」


ミチルは水を取り換えるのに、2人と顔を合わせて頭をさげた。


「突然迷惑かけちゃってごめん!!
私ひとりの判断で詳しい事情はまだ言えないけど、彼が・・・柏木響さんっていうんだけど、目を覚まして話ができるようになったら、きちんと説明するから少しだけ待って。」


「あんたが私らに頭をそれだけ下げるっていうことなかったじゃないの。
まずは柏木さん?元気にしてあげなさい。

あ・・・でも、あの方は危ない職業の方とかじゃない?ごめんね。」


「あのね、私がテラスティン王国のお妃候補イベントに申し込んだときに私を採用してくれた人で、私の担当執事で、この前ここにお金を振り込んだって電話してきた人。」


「えっええええーーーー!まぁ。じゃ、うちの恩人じゃないの。
そりゃ、元気になってもらわんと。」


「もう、お母ちゃんったら。」


「ねぇ、ってことはクラン社長が敵って言ってた・・・人?」


「たぶん・・・。でも、私がきいた話ではクランは何か泥棒したときに、柏木さんの弟さんの会社で不正が怒っている証拠のチップを床に落としていったってことよ。」



「俺は泥棒してたんじゃない、じいさんのコレクションを返してもらっていたんだ。
そのときに、わけのわかんないチップを落とした。
それがどうかしたのか?」


いつのまにか気配を感じる前にクランはミチルとミナトの話の中に入ってきていた。


「それは大きな声で言えないけどさ・・・」


「うんうん」


「柏木さんの弟さんの会社から密貿易で麻薬の取引があったという証拠のチップだったのよ。」


「な、なんだって!あいつそんなやばいことをやってたのか?」


「違うわよ。柏木さんは被害者。弟さんがそんなチップの証拠にたどりついたときに・・・殺されちゃったの。

それで彼は犯人を捜してテラスティンと日本を行き来していたのよ。」


「テラスティンが輸出先か?ってことはイディアムのいる王宮?」



「な、なんでクランそんなこと知ってるの?」


「入ったことがあるんだ。俺はじいさんのコレクションを取りに入っただけだから。

王宮のイディアム王子の部屋の下に地下室があったんだよ。
その中に黒い箱がたくさん積んであった。

じいさんのコレクションは王宮のリビングにあったから、地下室は結局素通りだったんだけどな。
いけないにおいがプンプンしてたから、やばいと思って離れたよ。」


「ねぇ、クランはイディアム王子とわかりあってるみたいだったけど、どういう付き合いだったの?」


「あいつの手下に一度捕まったことがあるんだ。
いや、捕まったのは俺の姉だ。

じいさんのコレクションを取り返されてしまったのさ。

事情を話して頭をさげて返してくれるように姉は頼んだよ。

そしたら、絵と彫刻は返してくれたけど、姉さんは・・・ピストルで撃たれた。」


「なんてひどいこと!」


「命はとらなかったから自分は親切だとか言ってな。
当時の部下たちが姉を病院にかつぎこんだのはいいが・・・姉は今も意識がもどらないんだ。

そして、とうとうあいつら俺にもたどりつきやがって、コレクションを取り返してまわっているのをバラされたくなかったら、言うことを聞けってね。」



「それで私のテニスのコーチも引き受けたの?」


「うん。でも・・・柏木キョウって弟の名前だって気がつかなかったよ。」


「この人はヒビキさん。キョウさんとキヨトさんって双子の弟をテラスティンがらみで殺されてしまったのよ。

そして、ここでも常に敵の監視を警戒して・・・。」


「きっついな・・・俺はまだ姉ちゃんが目を覚ましてくれるかもって思ってるけど、こいつはもう家族も身内もいないんだな。」


「うん・・・。ピリピリと肩にいっぱい力いれたまま、たったひとりで捜査してたんだと思うわ。」
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