四竜帝の大陸【赤の大陸編】
「ブランジェーヌよ」

我は両手を伸ばし。

「<赤>よ」

ブランジェーヌの頬に、指先で触れ。

「お前は子とは交尾しない。快楽を得るための性交をしない、それを望まない。我も同じだ」

手のひらで、包んだ。

「私は貴方の子じゃないわ。貴方は私の父親じゃない」

今まで意味の無かったぬくもりが。

「…………そうだな。お前は我の子では無いが」

意味を持ち、我の皮膚に染み入り溶ける。

「我、いや……この身にとって。<古の白>にとってお前は、四竜帝は『子』と同じなのだ」

我は何度この赤い瞳を見、この赤い髪にこうして触れただろうか?
この<赤>も、その前の<赤>も。
産まれ、生き、死んでいった。
雌雄、姿形が変わろうと。
この色は、変わらない。

「……子? どういう事? ……<古の白>(ヴェルヴァイド)にとって? なら、今ここにいる貴方は『誰』なの?」
「……」

その問いを四竜帝から聞くのは、何度目か。

「“貴方”は、誰なの?」

皆、去り逝くその時までには必ず一度は口にする。
 
「我は」

その問いに、我は初めて答えた。



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